量産

射出成形のヒケ対策がわかる|設計・金型・成形条件の原因と改善策

射出成形のヒケ対策がわかる|設計・金型・成形条件の原因と改善策

「リブの裏に出るヒケが、成形条件をいくら調整しても消えない」
「量産直前の外観検査でヒケを指摘されて、対応に追われている」

射出成形のヒケに、このような悩みを抱える設計者は少なくありません。ヒケの原因は、樹脂が冷えて固まるときの体積収縮です。金型がすでにできている段階では、動かせる手は成形条件の調整、次いで金型の修正の順になります。本記事で解説するのは、ヒケの発生メカニズムと原因の切り分け方、そして「今からできる順」に並べた対策です。金型側の対策や解消しないときの手段に加え、次の製品につながる設計の考え方まで整理します。

【こんな方向けの記事です】

  • 成形条件を調整してもヒケが解消せず、次の一手を探している
  • ヒケの原因が設計・金型・成形条件のどこにあるか切り分けたい
  • 次の製品でヒケを繰り返さない設計の考え方を知りたい

射出成形のヒケとは

表面にできるくぼみ状の成形不良

ヒケ(シンクマーク)とは、成形品の表面にできる浅いくぼみ状の成形不良です。溶けた樹脂は、金型の中で冷えて固まるときに体積が縮みます。表面が先に固まったあとも内部では収縮が続き、表面が内側へ引っ張られてくぼみます。つまりヒケの正体は、内部の収縮を補う樹脂が足りず、表面が沈み込んだ跡です。収縮の大きさは樹脂によっても異なり、ポリプロピレン(PP)などの結晶性樹脂は収縮率が大きく、ヒケが出やすい傾向があります。

ヒケが発生しやすい箇所

ヒケは、周囲より冷えるのが遅い箇所、つまり収縮量が大きい箇所に集中します。よく見られるのは次の3つです。

  • 肉厚部:樹脂の量が多く、内部が固まるまで時間がかかる
  • リブやボスの裏側:付け根の樹脂だまりが、表側の面を引っ張る
  • コーナー部:熱がこもりやすく、冷却が遅れる

例えば製品の裏側にリブを立てると、反対側の意匠面にうっすらとしたくぼみが現れます。ヒケが現物のどこに出ているかは、後述する原因の切り分けで重要な手がかりになります。

ヒケが引き起こす問題

ヒケの影響は、外観品質の低下だけではありません。くぼみの分だけ寸法がばらつき、はめ合いや組み付けに影響する場合があります。また、表面が固くて沈み込めないときは、内部にボイド(空洞)ができて強度低下につながります。外観部品でなくても放置できない不良のため、原因の特定と対策が必要です。

ヒケの原因は4つに切り分ける

製品設計・金型・成形条件・材料の4分類

同じヒケでも、原因は大きく4つに分かれます。

  • 製品設計:肉厚差の大きい形状や、厚いリブ・ボスに起因する
  • 金型:ゲートの位置・サイズや冷却回路の配置に起因する
  • 成形条件:保圧や温度の設定に起因する
  • 材料:収縮率の大きい樹脂や、乾燥不足など材料の状態に起因する

切り分けの手がかりは、発生箇所と再現性です。厚肉部やボスの裏側など決まった位置に毎回出るなら、形状か金型に原因がある可能性が高くなります。一方、ロットや成形条件によって出たり出なかったりするなら、条件設定や材料の状態を疑うのが妥当です。

金型ができている場合、動かせるのは「成形条件→金型修正」の順

4つの原因のうち、すぐに動かせるのは成形条件だけです。金型の修正には費用と時間がかかり、根本原因が製品設計にあっても、金型が完成したあとでは形状をすぐに変えられません。本記事では、成形条件、金型修正、それでも消えないときの手段の順で対策を紹介します。

今すぐできる:成形条件でのヒケ対策

射出成形のヒケ対策がわかる|設計・金型・成形条件の原因と改善策

1|保圧力・保圧時間を最適化する

成形条件によるヒケ対策の中心は、収縮分を樹脂で補う保圧の見直しです。保圧が不足すると内部の収縮を補えず、表面が沈みます。まずは保圧力を段階的に上げて、ヒケの変化を確認します。あわせて見直したいのが保圧時間で、ゲート(樹脂の注入口)が固まる時点まで保圧を保つのが基本です。この時点はゲートシールと呼ばれ、それより前に保圧を切ると、収縮分の樹脂を送り込めません。また、保圧をかけるには、射出後にシリンダー内へ樹脂を残すクッション量の確保も必要です。クッション量がゼロの状態では、圧力のかけようがありません。設定を変えるときは1条件ずつ動かして結果を記録すると、要因を特定しやすくなります。

2|金型温度・樹脂温度を調整する

温度の調整には、大きく2つの方向があります。1つは金型温度を下げて表面を早く固め、くぼみにくくする方向です。もう1つは樹脂温度を下げて、収縮量そのものを減らす方向です。ただし、どちらの調整にもデメリットがある点には注意が必要です。金型温度を下げると転写性が落ち、表面の光沢やシボの再現に影響します。樹脂温度を下げると流動性が落ち、ショートショット(充填不足)を招くことがあります。ヒケと他の成形不良のバランスを見ながら、少しずつ調整するのが実務的な進め方です。

3|材料の状態を管理する

成形条件をいくら調整しても、材料の状態が悪ければヒケは安定しません。吸湿しやすい樹脂で予備乾燥が不足すると、収縮の挙動が変わり、ヒケやボイドの原因になります。再生材の混合比率が高い場合も収縮率が変わるため、ヒケの安定には材料の均質さが欠かせません。条件出しを始める前に乾燥条件と再生材の比率を確認しておくと、原因調査の遠回りを避けられます。

成形条件の調整で解消できるか、金型側の対策まで必要かは、金型と成形の両面がわかる加工業者に相談すると切り分けが早く進みます。

次の一手:金型側でできる対策

1|ゲートの位置とサイズを見直す

成形条件で解消しないヒケには、費用と時間はかかりますが、金型側の対策を検討します。最初に見直したいのはゲートです。ゲートを厚肉部の近くに配置すると、収縮の大きい箇所へ保圧が直接届きます。ゲート径を大きくする方法も有効で、ゲートが固まるまでの時間が延び、保圧を長く伝えられます。逆にゲートが小さいと早く固まり、保圧時間を延ばしても樹脂を補充できません。「保圧を上げても効かない」ときは、まずゲートに原因がないかを確かめます。

2|ランナー・スプルーを太くする

ゲートまで樹脂を運ぶランナーやスプルー(樹脂の通り道)の細さも、保圧が届かない原因になります。通り道が細いと圧力損失が大きく、成形機でかけた圧力が製品部へ届く前に目減りします。保圧を効かせるという目的はゲートと同じため、ランナーサイズの見直しはゲートと一体で考えるのが基本です。

3|冷却回路を見直して温度ムラをなくす

ヒケが特定の箇所に偏って出る場合、疑わしいのは金型の温度ムラです。ヒケの出る箇所の近くに冷却水路を追加・再配置すると、その部分の冷却が早まり、収縮の偏りを抑えられます。金型全体の温度ムラが小さくなるほど収縮は均一に近づき、ヒケの偏りも解消へ向かう仕組みです。水路の見直しは冷却時間の短縮につながる場合もあり、量産効率の面でも利点があります。

それでも解消しないときの手段

射出成形のヒケ対策がわかる|設計・金型・成形条件の原因と改善策

シボ加工で目立たなくする

成形条件と金型修正を尽くしても、浅いヒケが残ることがあります。そのときの現実的な選択肢が、金型表面にシボ(梨地などの細かい凹凸模様)を付ける方法です。表面に模様があると光の反射が散り、浅いヒケは視認されにくくなります。ヒケ自体をなくす対策ではないものの、外観部品では広く使われてきました。ツヤのある平滑な面ほどヒケは目立つため、意匠として許容できるなら検討する価値があります。シボの種類や粗さで見え方が変わるので、金型メーカーと相談しながら決めるのが確実です。

材料を変更する

材料の側から、収縮量そのものを減らす方法もあります。ガラス繊維で強化したグレードは収縮率が小さく、ヒケの抑制に有効です。樹脂によっては、低収縮グレードが用意されている場合もあります。ただし材料の変更は、物性・コスト・外観のすべてに影響する点に注意が必要です。強化グレードでは表面の光沢が落ちるなど外観も変わるため、要求品質との兼ね合いで検討します。

切削・研磨で後加工する

ヒケた面を切削や研磨で削り、平面を出す方法もあります。成形後の追加工で面を整えるため、ヒケの深さによらず外観を整えられます。工数は増えるものの、金型の修正と比べて早く確実に対処できる場面も少なくありません。樹脂切削を得意とする業者なら、成形と追加工を一括で相談できます。このほかガスアシスト成形など、成形方法の変更でヒケを避ける選択肢もありますが、専用の設備が必要です。まずはシボ・材料変更・追加工の3つから検討するのが現実的です。

実は、ヒケの大半は設計段階で決まる

ここまで紹介した対策には、共通の限界があります。肉厚差そのものが大きい形状では、条件や金型をどれだけ調整しても、収縮の偏りを完全には消せません。ヒケの多くは、金型を作る前の設計段階で決まります。次の製品で同じ悩みを繰り返さないために、設計段階で押さえたい3つの基本と、外観部品の設計で使われている定石を紹介します。

1|肉厚をできるだけ均一にする

設計対策の基本は、肉厚の均一化です。肉厚差があると冷却速度に差が生まれ、厚い側の収縮が遅れてヒケになります。機能上厚みが必要な箇所は肉抜きで空洞化し、周囲の肉厚に近づけます。強度が足りない場合は、厚みではなくリブで補うのが原則です。

2|リブ・ボスの厚さは基準肉厚より薄くする

リブの根元が厚いと付け根に樹脂だまりができ、裏側の面にヒケが出ます。リブの根元の厚さは、基準肉厚の50〜60%程度が目安です。ボスも考え方は同じで、付け根の肉盗みで樹脂だまりを減らし、強度は三角リブなどで補います。

3|ゲートから遠い位置に厚肉部を置かない

保圧はゲートから遠いほど届きにくく、末端にある厚肉部はヒケが残りやすくなります。形状を配置する段階では、厚肉部の位置とゲートを入れられる位置をセットで考えることが大切です。金型メーカーとゲート位置を早めに擦り合わせておくと、この問題は設計段階で回避できます。

現場で使われている射出成形のヒケ対策

特に外観部品においては、ヒケの悩みは尽きません。リブをどれだけ細くしても、ツヤのある外観面ではわずかなヒケが目立つことがあります。薄肉化は設計対策の基本ですが、それだけで確実に消せるとは限りません。

そこで実務でよく使われるのが、どうしても消えない外観面のヒケをシボ加工で目立たなくする方法です。前章で紹介したシボ加工は、量産が始まってからの救済策としてだけではなく、設計段階から織り込まれることも多い手段です。

また、外観面の裏へ直接ボスを立てる形状は、ヒケの典型的な原因として知られています。外観品質を優先する部品では、傾斜ピンを使った構造でボスを外観面から切り離す設計が使われてきました。金型費は高くなりますが、外観面のヒケを構造から断ちやすい方法です。

ヒケを成形現場の調整だけに頼らず、形状と金型構造で先回りして抑える。この発想が、外観部品の設計では役立ちます。

まとめ

ヒケの原因は樹脂の体積収縮で、製品設計・金型・成形条件・材料の4つの観点に切り分けられます。金型がすでにある段階で動かせるのは、成形条件の調整、金型の修正、シボ加工・材料変更・追加工の順です。一方で、ヒケの多くは金型を作る前の設計段階で決まります。肉厚の均一化、リブ・ボスの薄肉化、ゲートを意識した形状配置は、次の製品で必ず生きる知識です。次の製品では、金型を作る前の設計段階のうちに、金型製作から射出成形まで一貫対応できる業者へ相談してみましょう。

よくあるご質問 FAQ お問い合わせ・ご相談 Contact

Recruit

採用情報

「より良い明日」を共に創り上げていただける人材を募集しています。当社の製造に関する技術やノウハウを継承し、将来的には当社業務の後継者に成長していただけるような、熱意溢れる方をお待ちしております。

募集要項を見るRequirements

Column

お役立ち記事

ものづくりに関する豆知識や、加工方法・素材選びのポイント、試作から量産までの進め方など、製品開発に役立つ情報をお届けします。「こんなことはできる?」と気になったときの参考にご覧ください。

News

ニュースリリース

  • お知らせ

    ホームページをリニューアルしました。

  • お知らせ

    伸光製作所の子会社になりました。

Back to Top